2018.06.21

上場したメルカリがヤフオクに勝てたサービスの作り方

先日、メルカリが上場されましたね。
 
おめでとうございます。
 
ここ数年で最高に伸びたサービスの1つであることは間違いなく、こんなサービスを作られたメルカリはただただ尊敬いたします。
 
私の会社はWEBコンサル・WEB制作・WEBマーケを主にやっていますが新規サービスを頻繁に立ち上げるような有名事業会社出身者で構成されているため、その経験を活かして新規サービスのコンサルティングも行なっています。
 
そこで今回はメルカリがなぜヒットしたのかについて、
 

  • ●  世間で言われていることをまとめ
  • ●  私なりのニーズによる分析(Problem/Solution Fitというスタートアップ界隈ではそこそこ有名?な視点で)

 
という流れで説明したいと思います。
 
 
 

世間ではどのようなことが言われているのか

 

まず、「メルカリ ヒットの理由」でググってみました。ヒットの理由とされている箇所を抜粋してみました。

なぜメルカリは、そっくりのヤフオクがあるのに急成長できた?その究極の謎と答え

一番しっくりくる説明は、「メルカリはヤフオクと似ているように見えるが、実はまったく違う市場の、違うサービスだった」という説明だ。
市場が違い、ニーズが違い、顧客が違い、バリュープロポジション(ウリとなるサービスの特徴)が違えば、これはまったく違った世界での競争になる。
メルカリは具体的にヤフオクとどう違うのか。スマホアプリから始まったメルカリでは、身の回りの商品をすぐに売りたい女性が顧客である。
そしてメルカリの商品の足は早い。利用者も一日に何回もメルカリを覗く。利用モデルがヤフオクと全然違うことがわかる。
女性ならではの顧客ニーズに対する配慮も充実している。たとえば、「売りたくない人には売りたくない」というニーズだ。まだ数回しか使用していないエルメスの高級下着を1万5000円で売りたい場合でも、買ってほしい相手は当然同世代の女性。おじさんには売りたくないというニーズがある。
メルカリの場合はヤフオクと違い、デフォルトで相手に個人情報を知られないまま、取引を完了することができる。これはターゲットユーザーである女性におおいに刺さったサービスのようだ。
正確にいうと、ヤフオクにも近いサービスはあるが、メルカリのほうがずっとシンプルだ。


 
 
 
次に創業者の山田さんのインタビューより
 
900万DLのフリマアプリ『メルカリ』はなぜ成功したか?山田進太郎代表インタビュー

 

山田 オークションとフリマの違いというよりは、PCとスマホの違いが大きいかもしれません。CtoCは、売り手と買い手が必要ですよね。日本におけるネットオークションは、“ヤフオク!”の独壇場でした。ヤフオク!のPCプラットフォームに対して、売り手も買い手もPCの環境をそろえていたんです。
山田 僕らのユーザーって、そもそもPCを使わないユーザーが多いんです。こうした新しい層に対して、新しいサービスをぶつけていったことが、受け入れられた理由なのかな。
山田 フリマは、スマートデバイスに合っているのかもしれません。フリマって、値段が決まっているから取引が早いんですよ。オークションは、期日まで待たなくてはいけない。スマホでやるのに、1週間や10日なんて待っていられないですよね。
山田 固定額で、誰でも早い者勝ちという単純明快な市場をスマホユーザー向けに最適化したのがうちのサービスです。


 
 
 
次にメルカリ内でのユーザーの声
 

フリルよりもメルカリが人気なのはなぜ??

フリルは女性のファッション系に特化しているイメージが強いからだと思います。
利用者が多くて売れやすいから


 
 
 

世間で言われているメルカリヒットの理由まとめ

まとめると

  • ●  メルカリとヤフオクは違う市場 身の回りの商品をすぐに売りたい女性が顧客
  • ●  相手に個人情報を知られないまま、取引を完了することができる。
  • ●  PCとスマホの違い メルカリはシンプル。
  • ●  フリルは女性のファッション系に特化
  • ●  利用者が多くて売れやすいから

みたいな感じでしょうか。

概ね同意なんですが、何かこれだとしっくりくる感じがしないんですよね。

こんなに爆発的にメルカリが伸びた根本の理由としてしっくりこないと言いますか。

そこで、メルカリヒットの理由の構造を掘り下げてみました。
 
 

Problem/Solution Fitの観点でのメルカリヒットの分析

 

私は新規サービスを考えたり、分析する上でProblem/Solution Fitという考え方を使います。
 

まずProblem/Solution Fitの定義ですが、

スタートアップにおいて最も重要なPMFの図り方と達成方法

PMFの前にやってくるのが、プロブレム・ソリューション・フィットと呼ばれるフェーズです。
スタートアップが達成すべき最大の目的は、「解決に値する課題と、その課題の最適な解決方法を見つけること」。
ほとんどのプロダクトは「課題やニーズの発見」というステップから具体的な構想や開発が始まります。
しかし、ここで忘れてはいけないのが、「課題やニーズには、複数の解決方法が存在する」という事実
このフェーズにおけるスタートアップ最大の使命は「解決に値する課題と、その課題に対する最適な解決方法を見つけること」


 
 
つまり、Problem/Solution Fit=「解決に値する課題と、その課題の最適な解決方法を見つけること」。
 
 
Problem/Solution Fitはスタートアップ界隈では比較的メジャー?な考え方の一つかもしれません。
 
ただ、この概念がわかるようでわからない。結構難しいんですよね。。。
解決に値する課題と言われてもわかりませんよね。
 
簡単に説明するとニーズの強さと思ってもらえば良いと思います。
必然性という言葉の方がしっくりくるかもしれません。

 
 
 

必然性とは

必然性とは必ずユーザーが求めるもの。”必ず”というところが大事です。
たいていサービス・商品は何らかのニーズを満たすものであり、課題を解決するものです。
 
ただし、それでは多くの場合、必然性とまでは言いません。
 
例えば、同じ商品が2つあります。1つは1万円。もうひとつは3000円。
 
こういう状況であれば100人いれば100人ともが3000円のものを買うでしょう。
 
こういうものが必然性です。強力なニーズと言っても良いかもしれません。
 
 
 
一方で、なかなか購入できない1万円の人気アーティストのチケットがあります。それが3万円で購入できるとします。
 
こういう状況であれば100人いれば100人ともがこのチケットを買うでしょうか?
 
当然買いたいというニーズはあると思います。
 
しかし、”必ず”と言えるかというと言えない。つまり必然性としては前者に比べて弱いんです。
 
これはそもそものフリマとオークションをニーズの強さで比べたものです。
 
ニーズの強さだけを考えればフリマの方がオークションより強いというか、わかりやすいんですね。
 
 
 
こういうニーズの強さはそのままサービスがスケールしやすいかどうかに関わってきます。
 
100人いたら100人欲しいと言ってもらえるサービスは利用してもらうのが簡単です。
 
シンプルな商売の原則で考えると、、、
Aという商品を誰かに売ろうとします。
買いたい人にすぐにアクセスできるなら自分でアクセスすればいいでしょうし、もっと言うと欲しいですと向こうから来てくれた方がいいですよね。
 
向こうから来てくれる場合はニーズが強い証拠ですよね。
 
向こうから来てくれない場合にはどうするか。自分から買いたい人を探さないといけません。
営業を雇ったり、必死に商品を広めるためにマーケティングをしたり。。。
 
 

本質から考えればめちゃくちゃ必然性が高いAというサービスを作ってしまえば、顧客は向こうからやって来てくれるわけですから、営業もマーケティングも不要になるんです。
 
つまり、勝手に利用者が増えていくということで、スケールしやすいということです。
 
実際にはメルカリはTV CMをサービスリリースして間もない頃からやってましたが、スピード感を高めるためであって、やらなくてもある程度は伸びたとは思われます。
 
こういうことからもわかるように
 
ニーズの強いサービスを作れるということはスケールと比例すると言えます。
 
構造としてオークションよりフリマの方がスケールしやすいということはご理解いただけたと思います。
 
 
 
では、フリマにおける「解決に値する課題」とは何でしょうか。

フリマにおける「解決に値する課題」

フリマやオークションは買い手と売り手が存在します。
 
まずは売り手側から考えてみます。
 

売り手

不用品を売りたいニーズがある。フリマという特定の場所で一部の人が不用品を売っている。
 
これはリアルの世界で各地で行われているためある一定のニーズがあることはすでに証明されています。証明済みのニーズとも言えます。
 

証明済みのニーズとはもう市場があるため、ニーズの検証がある意味不要なものだと思ってください。
 
フリマをリアルの世界でやる場合、、仕事がない土曜や日曜に公園に自宅の不用品をいっぱい持っていき、、、
風呂敷を広げて、それぞれに値札をつけ、来てくれた人とコミュニケーションを取り、時には値下げを要求され、、、
 
そういうことをして丸一日いて、持参した不用品の一部が売れるという感じではないでしょうか。

フリマというリアルな世界で証明済みの一定のニーズがあるビジネスですが、ここでざっと思いついたことを書きましたがこれだけ改善の余地がある課題があります。
 
 

改善の余地があるリアルなフリマの課題

  • ●  仕事がない休日を使うことになる。せっかくの休みなのに。。。
  • ●  自宅から売れるかどうかわからないものをたくさんフリマ会場に持っていく手間が発生する。
  • ●  値札をつける手間が発生する。(実際のフリマをあまりしらないのですが、きっとつけてますよね?つけないこともあるのかな。。。)
  • ●  来てくれた人とコミュニケーションが発生する(コミュニケーションはしたい人もいればしたくない人もいるでしょう)
  • ●  売れようが売れまいが、フリマ会場にずっといないといけない。
  • ●  不用品が全部さばけるわけではない。

 
 

売り手にとってのベストな状態は

  • ●  休日を使わず、気軽に出品できる
  • ●  出品後も手間がかからず、決めた値段ですぐに不用品がさばける

こういうことが大事だとわかります。
 
 
 
次に買い手側を考えます。
 

買い手

フリマもそうですし、古着屋やリサイクルショップなどが存在する以上、良いモノを少しでも安く買いたいというのは証明されているニーズです。
 
これらに買い手の視点で行う場合、土曜か日曜にフリマ会場に向かう、または古着屋、リサイクルショップを巡ることになります。
 
服を買う場合などはそうですが、こういうリアルなショップでブランド品を探すのは大変ですよね。
 
また、品揃えもそこまで多くはないでしょうからせっかく足を運んでも自分が欲しいものが見つかる可能性もあまりないかもしれません。
 
 
 

買い手にとってのベストな状態は

  • ●  品揃えが多く、比較したり商品を探すのに手間がかからない
  • ●  定価より安く、手間なくすぐに購入できる

こういうことが大事だとわかります。
 
売り手側、買い手側ともにベストな状態を考えるとフリマという市場は証明済みのニーズではありますが、リアルな世界では手間がかかっていて、不便であり、すぐに売買が行われないという課題が存在している市場だとわかります。
 
だからこそ、メルカリはすぐに出品できて、すぐに売れる、すぐに買えるということが非常に大事なサービスであるとわかります。
 
 
それでは上記の観点から世間で言われているヒットの理由について考察していきます。
 

  • ●  メルカリとヤフオクは違う市場 身の回りの商品をすぐに売りたい女性が顧客

 
→メルカリとヤフオクは違う市場ということはその通りだと思いますが、女性が顧客かどうかは本質ではありません。
リアルなフリマ市場をスマホサービスで置き換えると言うサービスをリリースした初期においては女性ユーザーが獲得しやすかったでしょうし、置き換えやすかったとは思います。
 
ただし、すぐに売れる、すぐに買えることが大事なサービスということからすると男性もいた方がすぐに売れて、すぐに買えやすいサービスにはなります。
 
 

  • ●  相手に個人情報を知られないまま、取引を完了することができる。

 
→これはまあ、そういうことを気にする方もいるかもしれませんが、あくまでも「手間なく利用できる」手段の一つという感じです。
 
 

  • ●  PCとスマホの違い メルカリはシンプル。

 
→手間なくできるということは大事ではあるのでこれはその通りだと思います。
 
 

  • ●  フリルは女性のファッション系に特化

 
→フリルはここが大きく間違ってしまったんでしょうね。上で説明しましたが、リアルなフリマの大きな課題を解決するには「すぐに売れる、すぐに買える」が大事です。
そのため、ユーザーが絞られることはこれに反することになります。
 
 

  • ●  利用者が多くて売れやすいから

 
→これはその通りでしょう。ある意味、メルカリが伸びた後の結果論ではあり、利用者を多くするにはどうするかは「すぐに売れる、すぐに買える」ようにするということです。
 
整理しますと、フリマにおける「解決に値する課題」=「すぐに売れる、すぐに買える」という状態を作ることになります。
 
Problem/Solution Fit=「解決に値する課題と、その課題の最適な解決方法を見つけること」
 
のもう一つ「その課題の最適な解決方法を見つけること」についてはスマホメインで気軽に売り買いができる様々な機能を盛り込んで最適化させたということになります。

山田 固定額で、誰でも早い者勝ちという単純明快な市場をスマホユーザー向けに最適化したのがうちのサービスです。


 
まさにメルカリ創業者の山田さんがインタビューで答えられていたことですね。
 
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