2018.05.05
最近ではUI/UXという言葉がよく使われます。
一方でIT/WEB業界に昔からある言葉にユーザビリティという言葉があります。
また、今ではユーザビリティテストができる様々なツールも増えてきており、テストの手法も確立されてきています。
しかし、ユーザビリティの意味やUI/UXとの違いについては紛らわしくわかりにくいものです。
そこで今回は
について説明していきます。
ユーザビリティの意味ですが、定義がいくつか存在します。
ここでは代表的な
によるユーザビリティの意味を説明します。
また、意味を正確に理解したいというより、どう活用するかの方が大事だと思いますので、例をあげながら説明します。
早速ですが、ISO 9241-11ではユーザビリティの意味を「ISO 9241-11では、特定の目的を達成するために、特定の利用者が、特定の利用状況で、有効性、効率性、そして満足とともにある製品を利用することができる度合い。」
と説明されています。
でもわかるようでよくわかりませんよね。
そこで、文章を噛み砕いて、解説します。
ホームページに訪れる人は、目的を達成する、自らが抱える問題を解決するために、アクセスしています。
これが例えば、Amazonに訪れるユーザーでしたら、目的は何らかのものを購入しようとしている、または最近本を読んでいないから何か面白い本はないかなと面白そうな本を探している。
こういう事が目的です。
それを達成するためにAmazonは検索ボックスで特定のキーワードで買いたいものが探せるようになっていたり、カテゴリ分けがされていたり、その人の購買履歴からその人が興味があるのではないかと思う本をレコメンド(オススメ)してくれたりしています。
ユーザビリティとは万人にとって高いものではなく、誰かにとっては使いやすいものが、誰かにとっては使いにくい事がありえるということを示しています。
例えばですが、Amazonのようなサイトを好きな人もいれば、楽天のようなややごちゃごちゃしていますが、購買意欲がそそられるようなサイトが好きな人もいるでしょう。
子供でしたら、ひらがなばっかりのサイトは読みやすいですが、大人にとっては読みにくいですし、横文字が多いサイトは年配者は苦手かもしれませんが、若者は横文字で書かれている方がスッと入ってくるかもしれません。
つまり、ターゲットやペルソナを明確にしないとユーザビリティが高いとか低いとか一概には言えないということです。
こういうターゲットやペルソナがいない状態をゴムのユーザーになっているという言い方をすることがあります。
家庭用のwifiで比較的早い通信環境の人には多少画像があったり、アニメーションがあっても閲覧することは可能でしょう。
一方で、非常に遅い回線を利用している人にとってはとにかく軽くてサクサク見せて欲しいと思うでしょう。
また、例えば、朝8時から外でゴルフをやる予定の人はその日の時間毎の天気を正確に知りたいかもしれません。
同じ人でも、通勤前でしたら、時間はいいから傘がいるのかどうかとにかく知りたいかもしれません。
つまり、同じ人でも利用状況が変わるとユーザビリティも変わるということを意味しています。
少しわかりにくい言葉ですが、目標を達成する上での正確さ、完全性を指しています。
例えば、Amazonのレコメンドの例で言うと、たまたま最近プリンターを購入していて、またプリンターをレコメンドされても不要でしょう。
プリンターの用紙ならその人の目的にあっているかもしれません。
天気の例ですと、傘がいるのかどうわかれば満足な人もいれば、正確に降水確率を把握しないと完全に目的を達したと言えないシーンもあるでしょう。
これはそのままですが、ある本を買いたいとして、Amazonにアクセスしたらそのページに本がレコメンドされていたらそのままカートにいれて購入するのみなので効率的ですし、今ではカートにいれずにワンクリックで購入できるようにもなっています。
その一方で、Amazon内で検索するか、Googleやyahooで検索し、Amazonの対象商品のページにアクセスし、カートにいれ、購入に進み、決済ボタンを押すというフローは先ほどのワンクリックで購入の例に比べると効率は悪いです。
これは何となく満足度なんだろうなと思われるかもしれませんが、Amazonで買いたい商品が効率的に変えたとしても例えばですが、そのページに不快に思う差別的な本やアダルトな本が表示されていたら不快に思うかもしれませんし、一方で、何らかのチャリティーを行なっていますというバナーがあればAmazonに対して好感を抱くかもしれません。
これは極端な例でしたが、単純に見た目や色の好みなども満足度に影響するでしょう。
ISOの定義は正確ではあるのですが、難しくもあり、事例も数多く存在するわけでもなく、ではどうすればいいのかという次のアクションがわかりにくいとも言えます。
そこで、ユーザビリティ領域における専門家のJakob Nielsen(ヤコブニールセン)博士のユーザビリティの意味を説明します。
ニールセン博士は1995年から自身のウェブサイト useit.com にてユーザビリティについてのコラム「Alertbox」(英語サイト)を公開されています。
WEBの初期ではWEB制作会社の使い勝手を気にする一部の人にとって、ニールセン博士の本はバイブル的によく読まれていました。
私もユーザビリティに関してはニールセン博士の本で勉強しました。
内容としては紙をWEBにそのまま置き換えても使いにくいこと、WEBにおける使い勝手とはこういう事だと当時は珍しかった事例をあげながらユーザビリティを説明されていたので勉強になりました。
ただし、ニールセン博士が日本人ではなく、事例の紹介が海外の事例であることから、事例のサイトがどういうサイトなのかイメージがわかないものがあったのも事実です。
また、当時はネット環境が遅かったため、そういうことを考慮した例があったり、今と時代環境が変わったために直接の事例としては今では使えないものもありますが、根底にある考え方は今でも使えます。
今ではネット環境も早く、スマートフォンやアプリが登場したりと当時と環境は異なっていますが、ユーザビリティやUIが語られる事が多くなり、多くの本も出ていますが、結局はニールセン博士が言っていた事と時代が変わっても同じだなと感じることは多いです。
ヤコブ・ニールセン博士は、著書「ユーザビリティエンジニアリング原論」(日本語訳)の中でユーザビリティを以下と説明しています。
ISO 9241-11によるユーザビリティの意味と似ているところもありますが、こちらの方がじゃあどうするかという次のアクションが取りやすいのではないでしょうか。
こちらもAmazonの例を使いながら説明してきます。
システムは、ユーザーがそれを使って作業をすぐ始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
学習とは何でしょうか。例えばAmazonでしたら、カートというものがあります。ここに入れたら購入に進むのだなと一度使えば、ユーザーは学習できます。
システムは、一度ユーザーがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
これはISO 9241-11の時の例と同じです。ワンクリックの方が効率よく購入が行えます。
ユーザーがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない。
どのページも基本的には同じようなレイアウトで金太郎飴のようになっていると覚えやすく、目的を達成(タスクが完了)しやすいことを意味します。
Amazonに限らずですが、どこのホームページでもグローバルナビが上にあり、関連情報は右側にある。ボタンなどの意思決定エリアは下部にあり、などどのページも似たようなページのレイアウトになっていないでしょうか。
金太郎飴のような同じデザインってデザインとして面白くなく、質が低いのでは?と思われていた方ももしかしたらいるかもしれませんが、同じようなページになっているのはこういう理由があるからです。
システムはエラー発生率を低くし、ユーザーがシステム使用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。
例えば、入力フォームなどで、日本語のみという制約がある場合にはそれが伝わるようにしていないとエラーの発生率は高まるでしょうし、もしエラーが発生した場合にはどこがどういうエラーでこういう風に入力をし直してくださいと促されていると、エラー状態から回復もしやすいでしょう。
もっというと英語や数字が入力できないように日本語入力のみ可能になっていればそもそもエラーは起こりません。
システムは、ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できるようにしなければならない。
これもISO 9241-11の時の例と同じです。Amazonのデザインや表示されている要素で不快に感じる人も入れば、好感を持つ人もいます。
それでは同じようによく語られるUI/UXとユーザビリティの関係はどうなるのでしょうか。
簡単に説明するとユーザーとの接点を意味します。厳密にUIを説明するとUI=モノ・対象を指しており、例えば、ホームページのグローバルナビ、ボタン、画像などの各要素などを指しています。
IT/WEB関係でのUIという言葉の使われ方としては、デザインという見た目の話、操作性という使い勝手の話、情報設計という点でのわかりやすさなどを含んだ言葉として使われています。
簡単に説明すると、ユーザーの体験を意味します。
ホームページでの場合には開いた時にちょっとしたアニメーションがあれば心地よく感じるかもしれません。またサイト自体がサクサク動き、軽いと快適だと感じるでしょう。
ただし、UXはその対象物と出会った時の体験に止まらず、出会う前の体験も含めてUXと語られることもあります。
詳しくはUIとは?UXとは?その違いとデザインとの関係性についてをご参照ください。
ユーザビリティの定義に「主観的満足度」があることを考えると、UX=ユーザビリティ?と思われるかもしれません。
ただし、その他の説明のほとんどはUIに関することです。ではUI=ユーザビリティ?と思われるかもしれませんが、IT/WEB関係でどういうニュアンスで語られる事が多いかを私なりに解釈すると
=ホームページ、アプリなどと出会う前の体験、出会ってからの体験など一番広い概念。
=ユーザーとの接点。ホームページならホームページ自体、アプリならアプリ自体にユーザーが接する見た目、操作性という使い勝手の話、情報設計という点でのわかりやすさなどを含んだ言葉。
=ユーザーとの接点に関する見た目や使い勝手を主とし、満足度にも言及した概念。
となります。
関係性は UX > ユーザビリティ => UI というイメージです。
ここまでユーザビリティの意味・定義を説明しました。
それではUIを高めるために、ユーザービリティ(使い勝手)を良くするにはどのようにしたら良いのでしょうか。
ユーザービリティの意味から考え方・思想をご理解いただけたと思います。
一方で、今ではユーザビリティテスト(ユーザーテスト)のツールや手法も確立されてきています。
こういう便利なツールを使えば良いのでは?と思われるかもしれません。
ユーザービリティの意味(ニールセンのようなユーザービリティの思想)とユーザビリティテスト(ユーザーテスト)をどちらをどういう風に使っていくべきかを説明していきます。
実践レベルでUXについては高めようとする場合、カスタマージャーニーマップを作成したり、ペルソナを設定してはじめて実践レベルで使えるようになります。
UIを高めようとしたりUI設計を行う場合でもペルソナ設定は大事です。
【ペルソナ】
田中 太郎、73才、男性、四国出身、大阪在住 趣味は釣りで日々、釣り番組をみたり、釣り関係のホームページをチェックしている。
など、ユーザー像がかなり細かくなったものです。
【カスタマージャーニーマップ】
カスタマージャーニーマップとは顧客(カスタマー) 旅(ジャーニー) 地図(マップ)で、顧客がどのようなプロセス、タッチポイント、感情・思考でどのような体験をするかを1枚に視覚化したものです。
詳しくはUI/UXを高めるにはペルソナ・カスタマージャーニーマップが必要。をご参照ください。
そこから先にどうやって良いUIを作ろうかと考える場合には、昔からあるニールセン博士のユーザビリティの意味がUI設計をする場合には使いやすいです。
まず、新規にUI設計を作る場合にはそもそものデータがないため、どうしてもユーザービリティテストは使えません。
私が効率が良いと思う方法ですが、最初はペルソナを設定し、ニールセン博士の思想で設計するべきです。
その後にユーザビリティテストが良いと思います。
例えば、ホームページのリニューアルの場合でも、ペルソナが正しく設定されていることはまれです。
また、ホームページの一部改修ではなく、全面的なリニューアルを行うという場合には、最初から全てをデータに頼ったところで、リニューアルする場合には取っていたデータが比較対象にならないくらいリニューアルされることになると思います。
また、何らかの思想がないと統一感や一貫性がなくなるため、最初はニールセン博士の思想で設計が良いように思います。
ペルソナを設定し、一度しっかりとニールセン博士の思想でUI設計され、リリースされており、リニューアルではなく、問題や課題が限定的で、一部改修レベルの場合には、ユーザービリティテスト(ユーザーテスト)を行うのが良いと思います。
では、なぜニールセン博士の思想で全ての問題が解決されないのでしょうか。
使い勝手はある意味人間の主観で非常に曖昧なものです。
主観のため、ターゲットやペルソナを明確にし、そのブレ幅を小さくしているとも言えます。
ただし、自分の経験としても思想的にはこうなのに実際にデータを取ってみると思想に反したUIにした方が数字がよくなることがあります。
WEBの世界はデータ・ファクトが全てです。思想はどうあれ、ユーザーの行動が正解です。
そのため、あまり思想にこだわりすぎるのもよくありません。
ただし、注意点はユーザービリティテスト(ユーザーテスト)はWEB制作会社の単なる商売道具になりがちだということです。
ユーザビリティという言葉が流行れば、どこの業者もユーザビリティが得意だといい、UI/UXが流行ればどこの業者もUI/UXが得意だといい、SNSが流行ればSNSが得意だとどこの業者も言うものです。
WEBの世界はデータ・ファクトが全てです。
そのため、データが全てだから業者としては非常に売りやすいですし、顧客側もなんとなく正しいのだろうなと思ってしまうものです。
ここまで説明しないとユーザービリティテスト(ユーザーテスト)というデータに基づいた客観性が高く見えるものというのは、非常に強力で否定しにくいのです。
しかし、ツールは所詮ツール。使い方や計測ポイントを定める時には結局はニールセン的な仮説でやらないと、ありとあらゆるデータを集めて全部検証するのかということになります。
ツールが万能であるならばUI設計を得意とするUIデザイナー・ディレクターは一切不要で全員失業します。
ツールを使うのは人間です。人間が使う際にはやはりニールセン博士のようなユーザビリティの思想をもとに仮説を立てたり判断が必要になるのです。
いかがだったでしょうか。
今回はユーザビリティの意味、UI/UXとの関係性、その使い方について説明しました。
私もユーザビリティやUI/UXが得意だと言うデザイナーには良く会いますが、本当に得意な人には実はあまり会うことはありません。
ニールセン博士が説明するような時代に左右されない王道の思想を学んでいるようなデザイナーに会うことはほぼ皆無です。
思想ではなく、これが流行っている、これが効果的だと言う色々な点を学んでいて、その学んだ点の数が人によって多かったり、少なかったりするなという感覚です。
思想がないデザイナーのデザインはこのボタンはなぜこの形状でなぜこの色にしたのかなど聞いてみるときっと何も説明できないはずです。
私たちはただ作ることを目的とせず、今回のユーザビリティやUI/UXを考慮したコンサルティング、制作を得意としております。
もし、ちょっと自分たちでやるには大変だなと感じられたら、一度私たちにご相談ください。
特にtoC向けWEBシステム開発や新規事業立ち上げ(人材紹介サイト、物件紹介サイト、予約サイト、シェアリングエコノミーなどの各種マッチングサイト)などを行う場合には「ユーザビリティ」が非常に重要となります。
その一方で、こだわりすぎると費用がかかりすぎるという問題があります。
私たちでは、そのような問題を解決するためのサービスの提供もしています。
詳しくはまるで社内の開発チームのように開発を推進できる開発の本質を追求した新規事業のアプリ開発・WEB開発向けサービスをご参照ください。
興味がある方は是非お気軽にお問い合わせください。確実にメリットがある情報をご提供させていただきます。